易経の成立過程と六十四卦の本質
易経本文の成立過程のなかで、初めの段階で爻辞の文言を調えながら、分類し、爻辞を六つ組み合わせて「大成卦」にし、出来上がった「大成卦」が相互に関連付けが成り立つように全体的なデザインを作り上げた人、または人々がいることが近年の研究でわかっています。
卦の名称、卦辞は、上記の編集過程で、「卦」単位に爻辞六つを一つのグループにまとめる過程で出来上がったものです。 卦辞はその卦の本質を言ってはいません。まだ体系としての全体性がその段階では形成されていないからです。そのため「卦」の説明をする時には、卦辞を用いることは稀です。
卦辞がその卦の説明には何らなっていないのは、その成立過程にあります。体系としての全体性が発動してから、個々の卦の意味が生きてきます。
「陰陽」という抽象概念は、繋辞伝から始まります。それ以前の易経本文には「陰陽」という言葉は出てきません。
易経本文には哲学的な思考は何もないからです。 易経は、最初の原始的な段階から、積み上げていって出来上がっています。思想的なことは繋辞伝から始まります。易経本文には、倫理的、道徳的な思想は基本的に出てきません。繋辞伝の作者(複数)が易経本文の素材を使って、象徴性から意味を読み取ろうとする過程で、思想が芽生えてきました。
乾から坤までの八卦による分類は、後付けの論理です。「八卦」で説明のつかない大成卦がいくつもあるのはそのためです。
六十四卦からなる易のシステムが一つの体系として命を持ってから、六十四卦それぞれの意味とその象徴性が確定しました。
「周易講座」では、以上のことをベースにしたうえで、六十四卦の本質を説明しています。
(「易経講座」ではなく、「周易講座」である理由も以上のことがあるためです。)
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