小説「黄金列車」佐藤亜紀著
第2次世界大戦の末期のころがこの小説の舞台です。ハンガリーの国有財産を鉄道を使って、移送する任務を行うハンガリー政府の役人を中心に書かれています。
戦争末期であることから、積荷はいろいろなひとから狙われていて、それをかわしながら、任務を全うしていく話を中心に描かれます。
ハンガリーの国有財産といってもユダヤ人から強制的に没収した私有財産ですので、正当な国有財産というには疑問な物品が積まれています。
国の存続が怪しくなっていくなか、この国有財産の国内での帰属先も揺らいでいきます。
ものがたりは、この国有財産の一般的なものとしての価値を基準に進んでいきます。群がってくる人々は、積み荷の価値に引き付けられてくるわけです。
しかし、この物語は、まったく別の視点から積み荷を見ているひとびとの存在が最後出てきて、その人々が目的を達成して、小説の結末となります。この最後の部分はとても感動的です。地味な役人の仕事を描いているそれまでのストーリーから推定できる結末ではないです。
本当に守るべきものは、金銀財宝ではなくて、人から受け継いだ無形の思いであり、それをあらわすシーンが最後に来ます。
0コメント